浮気をした夫からの離婚請求は原則認められません。しかし、別居期間の長さ、離婚請求時の婚姻関係や家族関係の実態など様々な事情を考慮したうえで、離婚請求が認められる場合もあります。

有責配偶者からの離婚請求は原則認められない

婚姻関係の破綻を作出した配偶者のことを有責配偶者といいます。浮気、つまり、不貞行為は離婚原因となり(民法770条1項1号)、婚姻関係を破綻させるものなので、浮気をした夫は有責配偶者にあたります。離婚を請求する側が不貞行為を行うなど有責配偶者にあたる場合には、離婚は認められない方向に働きます。
本事例において、浮気をした夫からの離婚請求は認められにくいので、離婚を希望しない場合には、離婚を拒否するという対応をとることが考えられます。

有責配偶者でも離婚請求が認められる場合がある

しかし、有責配偶者だからといって、常に離婚が認められないというわけではありません。別居期間の長さ、離婚請求時の婚姻関係や家族関係の実態に応じて、有責配偶者からの離婚請求が著しく社会正義に反しないといえる場合には、離婚請求が認められることがあります。

昭和62年の最高裁判例(最高裁判所大法廷判決昭和62年9月2日民集41巻6号1423頁)は、有責配偶者からの離婚請求について次のような要素を掲げています。
①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
②夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が存在しないこと

これら3つはあくまでも考慮要素です。3要素を全て充たしていない場合でも、離婚請求時の婚姻関係や家族関係の実態など、様々な事情を考慮して、有責配偶者からの離婚を認めてもよいかどうか判断されることになります。

本事例でも、別居して相当期間が経過することで婚姻関係が既に破綻していると評価される場合、子がいる場合には子供の年齢や子が置かれている家庭的・経済的・精神的事情などを考慮したうえで、浮気をした配偶者からの離婚請求を認めても社会正義に反しないといえる事情があれば、浮気をした夫でも離婚請求が認められる場合もありえるでしょう。

執筆者:高江洲 ひとみ

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。