退去要求に応じる必要はありません。退去に応じる場合でも、条件として相応の立退料の支払を要求すべきでしょう。
家主(賃貸人)側から建物の賃貸借契約の解約を申し入れる場合、正当事由の存在が必要です(借地借家法28条)。
正当事由とは、判例上、賃貸借の当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し社会通念に照らし妥当と認められる理由(最高裁第2小法廷判決昭和25年6月16日)とされています。
本件のように、夫婦での入居を認めておきながら出生を理由とした解約申し入れを行うことに社会通念上合理性があるとは到底考えられないため、家主側からの退去要求に応じる必要はありません。また、仮に、こどもが生まれたら退去しなければならないという条件が賃貸借契約時に定められていたとしても、当該条件は公序良俗に反し無効であると考えられるため、この場合も退去要求に応じる必要はありません。
ただし、正当事由を補完する一要因として、いわゆる立退料の支払があります。
本件では、家主及び管理会社による対応が十分に期待できず、隣人との間のトラブルが容易に解決できない状況であると考えられます。
入居者側としては、家主が引っ越し費用や引っ越しに伴う初期費用相当額の立退料を負担するのであれば、退去に応じるという態度で対応するのがよいかと思います。
執筆者:山谷 周平
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。